診療案内 Department

リウマチ

関節リウマチについて

リウマチ性疾患は医学的には2,000種類にもおよぶ疾患群ですが、一般的に皆さんがリウマチと考えておられる病気は、関節リウマチと呼ばれるものです。

リウマチは紀元前からある病気ですが、まともな治療らしきことが始まったのは1940年頃で、つい最近のことです。

病因および疫学

関節リウマチの病因は(病気の原因)はよく分かっていませんが、免疫(病気を免れる力)の異常があることが分かっています。何らかの遺伝素因に外来刺激(ウィルス感染等)が加わり発症するものと考えられています。

関節リウマチは女性に多く発症する病気ですが、患者さんの約2割は男性です(男:女 1:4)。有病率は日本での疫学調査では0.4〜0.5%程度(つまり200人に1人程度)です。

症状

関節リウマチの症状は、主に関節の中にある滑膜という組織が腫れてくることにより生じます。

初期の症状は、朝のこわばり(起床時に手足の関節が動かしにくい感じ)と関節の痛みや腫れです。朝のこわばりは最低15分、多くは30分以上持続します。時には起床時の関節の痛みと感じられる方もおられますので注意が必要です。

関節の腫れは体重のかかる関節のみならず、体重のかからない関節(指などの小さい関節)が左右両側とも出現することが特徴です。症状が進行すると関節の変形が生じます。一旦変形が生じますと関節の機能は著しく低下することが多く、変形を予防するような早期の治療開始が望まれます。

治療法

関節リウマチの治療法は、早期においては薬物療法により関節の痛みや腫れを抑え、関節破壊の進行を抑制することが主眼となります。その他、関節破壊低下を防止するためのリハビリテーションがあります。

薬物療法

1. 非ステロイド性抗炎症薬(消炎鎮痛薬:NSAIDs)

消炎鎮痛薬は、関節の痛みや腫れを軽減する効果があり、速効性のため、患者さんの日常生活を改善するために用いられますが、関節リウマチの炎症を根底から取り除くことはできません。

長期間継続的に服用する場合があり、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの副作用が生じるため、十分に注意する必要があります。

2. 副腎皮質ステロイド剤(ステロイド)

この薬には強力に炎症を抑える効果があり、速効性です。抗リウマチ薬や免疫抑制剤の効果が現れるまで、関節リウマチの症状を抑えるために主に用いられます。しかし、非ステロイド性抗炎症薬同様、関節リウマチを完全に治してしまうことは出来ません。長期間用いると骨粗鬆症や骨折、胃潰瘍および高脂血症などの副作用が生じるため、抗リウマチ剤や免疫抑制剤の効果が十分に現れたら減量もしくは中止します。

3. 抗リウマチ薬(DMARDs)

抗リウマチ薬はリウマチの活動性を抑える薬剤ですが、一般に効果がみられるまでに1〜2カ月から半年くらいかかることが特徴で、そのため、多くの場合では副腎皮質ステロイド剤の併用が必要です。

金製剤(シオゾール)の注射や、アザルフィジン、リマチル、メタルカプターゼ、オークル、(モーバー)等の内服の抗リウマチ薬があります。

4. 免疫抑制薬

抗リウマチ薬が無効の場合に、免疫抑制薬が用いられます。我が国において関節リウマチに対して適応が認められている免疫抑制薬は、ブレディニン、メトトレキサート(商品名:リウマトレックス、メトレート)、アラバおよびプログラフです。ブレディニンを除き強い抗リウマチ作用を有します。

メトトレキサートは、欧米ではanchoring drug(関節リウマチ治療の基本となる薬剤)として用いられています。その反面、頻度は低いですが、間質性肺炎、骨髄抑制、易感染性等の重篤な副作用が発現する可能性があり、注意して用いる必要があります。

5. 生物学的製剤

生物学的製剤とは、生きた細胞が作るタンパク質などの物質を薬剤として使用するもので、炎症を引き起こすサイトカイン(免疫システムの細胞から分泌されるタンパク質)であるIL-6やTNFαの働きを妨げ、関節破壊が進行するのを抑えます。

現在関節リウマチに使用される生物学的製剤は、大別すると下記の3種類があります。

  1. IL-6の働きを妨げるもの
    アクテムラ(一般名:トシリズマブ)
  2. TNFαの働きを妨げるもの
    レミケード(一般名:インフリキシマブ)
    エンブレル(一般名:エタネルセプト)
    ヒュミラ(一般名:アダリムマブ)
  3. Tリンパ球の働きを抑えるもの
    オレンシア(一般名:アバタセプト)

生物学製剤は注射(点滴または皮下注射)で投与しますが、開始して1〜2週間で、関節の痛みや腫れが引いてきます。投与間隔はその製剤によって1週間に2回から2カ月に1回までとさまざまです。

手術療法

1. 滑膜切除術

関節リウマチは、関節内の滑膜の増殖が原因です。そこで増殖した滑膜を切除し、関節破壊を防止しようとする手術です。

主に手や肘等の上肢の関節や膝関節で行われます。最近では、関節鏡で関節内を見ながら滑膜を切除する関節鏡下滑膜切除術が行われています。手術時の患者さんが受ける負担も少なく、早期の日常生活への復帰が可能となってきました。

2. 人工関節置換術

関節が破壊されて関節可動域が低下し、体重を支える安定性など関節の機能が失われた場合に、人工の関節と取り替えて関節機能を再建しようとする手術です。股関節、膝関節そして肘関節で、長期的に良い結果が得られています。しかし、時に関節に挿入した人工関節に弛みが生じ、再手術を要することがあります。

関節リウマチの治療は最近10年で著しい進歩を遂げています。特に生物製剤が発売されてからは、寛解(リウマチの症状や兆候が消失した状態)を期待することができるようになりました。

早期発見・早期治療により、関節破壊を防ぎ、関節の機能を維持することができます。

日常生活や家事、仕事への影響を少なくするためにも、早期に専門医を受診されることをお勧めします。

関節リウマチの治療目標は「寛解」

以前、関節リウマチはその進行を止めることが出来ないと考えられていましたが、生物学的製剤が発売されてからは、進行を止めることが夢ではなくなり、関節リウマチの治療目標は「痛みを抑えること」から「寛解」へと変わりました。

「寛解」とは、関節リウマチの症状や兆候がほぼ消失した状態です。

関節リウマチの治療においては、関節の痛みや腫れをとる臨床的寛解、骨・関節破壊の進行を抑える構造的寛解、生活機能(QOL)を維持する機能的寛解を目標とします。